薬が効くってどういうこと?—体の中で起こっていることを知ろう
- アプエンテ事務局
- 5月30日
- 読了時間: 4分
更新日:6月12日

「薬は飲んだら効くもの」そう思っていませんか?
確かにその通りですが、薬が効くまでには体の中でいくつものプロセスが働いていることをご存じでしょうか。
このコラムでは、薬がどこを通ってどんな風に働くのか、そしてその効果を最大限に活かすために知っておきたい体の仕組みと薬の働きについて、わかりやすくご紹介します。
人体の構造と薬の関係
人の体は、たくさんの臓器や組織が連携して機能しています。薬がどこでどう働くのか、主な関係部位を見てみましょう。
🍽 消化器(胃・腸・肝臓など)
薬は多くの場合、口から服用され、胃や腸で吸収されます。
吸収された薬は、門脈という血管を通って肝臓に運ばれ、そこで代謝されます。
🫀 循環器(心臓・血管)
生薬は、植物・動物・鉱物など自然界にあるものを薬として使う素材のことです。
たとえば「葛根(かっこん)」「甘草(かんぞう)」「人参(にんじん)」などがあり、それぞれが効能を持った“自然の恵み”といえます。
漢方薬は、こうした生薬を組み合わせて作られています。
🩸 腎臓
腎臓は、使い終わった薬の成分や老廃物を尿として体の外に排出します。腎機能が低下していると、薬の副作用が強まることがあるため注意が必要です。
🧠 神経系(脳・脊髄・神経系)
一部の薬は神経伝達物質(セロトニン、ドーパミンなど)に作用し、神経の働きを調整します。
薬が体の中でたどる道のり
薬は体内に取り込まれると、効果を発揮し、最終的に体外へ排出されるまでに、次のような過程を経ていきます。
この流れは「ADME(アドメ)」と呼ばれ、薬の効き方や副作用、安全な使い方を理解するうえで非常に重要です。
・吸収(Absorption)
服用された薬は、まず胃や腸などの消化管から吸収され、血液中に入ります
・分布(Distribution)
吸収された薬は血液に乗って全身の組織や臓器に運ばれ、必要な場所で作用します
・代謝(Metabolism)
薬は主に肝臓で代謝(分解)され、体にとって処理しやすい形に変えられます
一部の薬は、代謝されることで初めて効果を発揮するものもあります(プロドラッグ)
・排泄(Excretion)
代謝された薬の成分は、主に腎臓を通じて尿として排泄されます
一部は便、汗、呼気などからも体外に排出されます

薬の作用の種類
薬の作用は、その影響がどこに及ぶかによって、大きく次の2つに分類されます。
●全身作用
薬が血液に乗って全身に運ばれ、特定の臓器や組織で効果を発揮するタイプです。主に内服薬や注射薬などがこれにあたります。
例:
・降圧薬(血管を拡げて血圧を下げる)
・鎮痛薬(中枢神経に作用して痛みをやわらげる)
・抗生物質(細菌感染症を全身レベルで治療する)
●局所作用
薬が特定の部位に直接作用し、その場で効果を発揮するタイプです。通常は体内にほとんど吸収されません。外用薬や点眼薬などが代表的です。
例:
・点眼薬(目のかゆみ・充血の緩和)
・湿布(関節や筋肉の痛みを軽減)
・外用軟膏(皮膚の炎症やかゆみを抑える)
局所投与でも全身作用があることも
一部の薬は、局所的に使用しても体内に吸収され、全身に影響を与えることがあります。
例:
・貼付型の鎮痛薬やニコチンパッチ
・坐薬(解熱・鎮痛用など)
このような薬は「局所投与・全身作用型」として分類されることもあり、使用部位だけでなく全身への影響にも注意が必要です。
薬をより効果的に使うために
薬の効果を最大限発揮させるには、次のようなことに気をつけましょう。
💊 服用時間を守る
「食後」「就寝前」などの指示には、吸収や作用を高める理由があります。
💧 飲み物は水またはぬるま湯で
お茶やジュース、牛乳、アルコールなどでは薬の吸収に影響を与えることがあります。
⚠️ 他の薬や食品との相互作用に注意
グレープフルーツ、納豆、アルコールなどが薬に影響することもありますので、事前に確認しましょう。
おわりに
薬は、体内で「吸収→分布→代謝→排泄」という流れを経て、ようやく“効く”という状態にたどりつきます。
こうしたしくみを少しでも理解しておくことで、薬とのより良い付き合い方が見えてくるはずです。
登録販売者試験でも、薬の作用や体内での動きに関する知識はとても重要な学習分野のひとつです。
日常生活にも活かせる知識として、ぜひ学びを深めていきましょう。